【業界別 / IT】プロダクトだけでは足りない。IT企業が語るべき“3つの軸”とは?(2/3)

プロダクトの魅力はある。
機能にも自信がある。
でもなぜか、話題にならない。伝わらない。指名で選ばれない――。

そんな課題を感じているIT企業は少なくありません。

理由のひとつは、「プロダクトが何か」ばかりが語られ、「なぜ作っているのか」「誰がどう作っているのか」が伝わっていないこと。
今、選ばれるブランドは、“プロダクトそのもの”ではなく、“その背景にある思想やストーリー”に共感されているのです。

この第2回では、IT企業が中長期の視点で語るべき「3つの軸」――
ビジョン、プロダクトの思想、そして組織や人について、どのように整理し、どう発信していくべきかを解説します。

単なる「情報の発信」ではなく、共感を生む“語り”の設計を始めるためのヒントにしていただければと思います。

だからこそ、プロダクトの背後にある“思想や姿勢”をセットで伝えることが、今の広報・PRには求められているのです。


この記事でわかること

  • なぜ「機能」だけの広報では限界があるのか
  • IT企業が語るべき“3つの軸”とは?
  • 各軸をどう発信に落とし込めばいいか
  • 実際に成果を出している企業の共通点
  • 自社の“軸”を言語化するためのステップ

「ちゃんと機能の強みも説明してるし、UIだって競合より良いはずなのに…」
「どうして“あっちの会社”の方が話題になっているんだろう?」

そんな風に感じたことはありませんか?

技術や機能だけでは差別化しづらい時代。似たプロダクトが溢れ、“誰が作っているか”や“なぜその形なのか”まで含めて判断される時代になっています。

特にIT業界では、

  • プロダクト間のスペック差が伝わりにくい
  • エンドユーザーのリテラシーによって評価がブレやすい
  • スピード勝負で「思想より出すこと」が優先されがち

という構造的な課題があります。

だからこそ、プロダクトの背後にある“思想や姿勢”をセットで伝えることが、今の広報・PRには求められているのです。


では、機能紹介以外にどんなことを語るべきなのでしょうか?
中長期的な信頼やファンを育てているIT企業が共通して発信しているのが、以下の“3つの軸”です。

① ビジョン・ミッション・創業の想い

多くの企業は、事業を始めた理由があります。

  • 元エンジニアとして感じた業界の非効率
  • 自分自身が苦労した体験を解決したいという想い
  • 社会の仕組みをアップデートしたいという衝動

けれど、その背景を「改めて丁寧に伝える」機会は意外と少ないものです。

創業の想いは、ユーザーやメディアにとって「物語の起点」になります。
事業が拡張するほど、“なぜやっているか”の原点がブランドとしての骨格になります。

② プロダクトの思想・設計ポリシー

UI・UX、料金体系、サポート方針。
あらゆる意思決定の背後には、必ず「設計者の判断」があります。

ですが、それを言語化せずにいると、ユーザーには“無色透明なサービス”に見えてしまうことも。

  • なぜこの機能を削ったのか?
  • なぜこのワークフローにしたのか?
  • なぜこのプライシングにしたのか?

そこに込めた“哲学”を発信することで、機能を超えた共感が生まれます。
同じ機能でも、「思想に共感して選ばれた」プロダクトは強いのです。

③ 組織・人・カルチャー

「誰が、どういうスタンスでこのプロダクトを作っているのか?」
ここにも、企業ごとの“らしさ”が色濃く現れます。

  • 社内でどう議論が起きているのか
  • チームとしてどんなことを大切にしているか
  • 成長フェーズにおける悩みや葛藤も含めたリアルな姿

これらを発信することは、単に“採用広報”のためではありません。
プロダクトに込められた空気感、姿勢、誠実さを外に届ける重要な手段でもあります。


情報の「発信」にはなっていても、「伝達」になっていないケースはとても多いです。
伝わるためには、“意図”を設計したメッセージに変換することが必要です。

たとえば…

  • プレスリリースに「なぜこの機能を開発したか」の背景を添える
  • ブログ記事で「この価格に込めた思想」をチームメンバーが語る
  • 経営者インタビューで、「社内で起きた変化」をストーリーとしてまとめる
  • SNSでエンジニア自身が日々の設計のこだわりを発信する

特にIT企業では、「作った本人が語る」発信がとても強いです。
“企業の顔”が複数見える発信は、信頼を分散させずに深めてくれます。


情報が溢れる中で「この会社の話はなぜか読みたくなる」と感じる企業には、共通する姿勢があります。

  • 自分たちの原体験や課題感を、丁寧に言葉にしている
  • 商品説明と思想説明がセットで語られている
  • プロダクトと人、テキストとビジュアルが一体化している
  • 一貫したトーンと、伝える側の顔が見える安心感

そして何より、「共感できる」「この会社と価値観が合いそう」と感じさせる接点を随所にちりばめているのです。

こうした企業は、発信のために“何か特別な素材”を持っているわけではありません。
日々の業務の中にある考えや判断を、丁寧に言語化しているだけなのです。


「うちはストーリーらしいものがない」「まだそんな段階じゃないかも」
そう感じる方こそ、一度立ち止まって棚卸しをしてみてください。

例えばこんな問いを、チーム内で投げかけてみてください。

  • 自分たちがこの会社・プロダクトにいる理由ってなんだろう?
  • この1年で、どんな価値観の変化があった?
  • なぜこの仕様を選んだのか?何と悩んで、何を捨てたのか?

すでに“語るべきもの”は、現場のなかにあるはずです。
それを見つけて、伝えやすく整理していくのが広報の役割です。


  • 今は「機能」だけでは選ばれない時代。信頼や共感がブランドの核になっている
  • IT企業が語るべき3つの軸:「なぜやるか」「どう作るか」「誰が担うか」
  • 特別な情報でなくてもいい。“日々の判断や価値観”がコンテンツになる

第3回では、
「明日から始める中長期ブランディング 5つのチェックポイント」
と題し、すぐに実践できるステップとチェックリストをご紹介します。


「自分たちが本当に届けたい価値って何だろう?」
「そのまま伝えると“熱すぎる”けど、言わないと伝わらない気がする」

そんな葛藤に向き合っている方へ。
Malenでは、言葉にしきれない“企業のらしさ”を一緒に見つけ、発信設計に落とし込むサポートを行っています。