広報体制に必要なのは、「変化に耐える設計」
本シリーズの第1回・第2回では、広報体制における課題と、その設計プロセスについて整理しました。
最終回となる今回は、Malenが広報パートナーとして関わるなかで見えてきた「伴走から自走」への転換点について掘り下げていきます。
多くの企業が、「とりあえず広報を始めよう」と動き出す際に、まず期待するのは施策面の即効性やメディア露出の増加です。
しかし、持続的な広報体制を構築したいなら、必要なのは“変化に耐える設計”です。
そしてその設計には、外部パートナーの支援が想像以上に大きな役割を果たします。
「支援の中で、組織が学習していく」設計を
Malenでは、クライアントを「代行する対象」とは捉えていません。
私たちの支援は、社内が少しずつ思考できるようになることを目的としています。
具体的には、以下のような問いに対して、共に言語化・構造化していく支援です。
- 社内における「発信すべき価値」は何か?
- 経営と広報の温度差はどこにあるのか?
- どのメディアとの関係性が、この企業らしいのか?
- 成果は何を基準に評価すべきか?
これらの問いに外部が答えを持ち込むのではなく、伴走のなかで企業自身が定義できるようにすることが本質的な支援の形だと考えています。
「広報が社内の議題になる」という変化
ある企業では、支援開始当初、広報は「とにかく何か発信をしよう」という姿勢にとどまっていました。
リリースやSNS投稿の運用が主体で、戦略的な意思決定とは距離がありました。
しかし伴走を重ねていく中で、
- 経営会議における広報的視点の導入
- 採用や事業戦略と結びつけた発信テーマの再設計
- 社内での表現・文脈共有のナレッジ蓄積
といった動きが自然に広がっていきました。
これは「施策の結果」ではなく、“広報という視点が、組織内の意思決定に入り込んだ”ことによる成果です。
広報パートナーに求められる“構え”とは
企業がこうした変化を遂げるには、パートナー側にも特有の“構え”が必要です。
Malenでは、以下の点を支援の前提に据えています。
- 情報を整える前に、問いを整える
- 施策を先回りで提案しない(その企業にとっての意義を共に探る)
- 発信物ではなく、“視座の共有”を成果と見なす
- 段階的な変化に応じた体制再設計を前提とする
これにより、私たちは支援の初期から「自走への道筋」を構造化していくことができます。
最後の選定ポイントは、「一緒に考えられるか」
広報パートナーを選ぶ際、多くの企業が「実績」「費用感」「スピード感」などの要素を重視します。
それらは確かに重要な判断材料ですが、本当に見落としてはいけないポイントは別にあります。
それは、
「継続的に議論を積み重ねられる関係かどうか」
という問いです。
- 施策単位でのやりとりに終始せず、視座の共有があるか
- 広報の定義そのものを問い直せる関係か
- 支援を通じて、組織そのものが“広報的に進化”するか
これらを意識できるパートナーと組めば、
施策ごとの成果だけでなく、**企業にとっての長期的な資産(視点・ナレッジ・関係性)**が残ります。
結語:広報は「思考の体制設計」である
広報を成功させるとは、単にメディアに載ることではありません。
社内の言語が磨かれ、経営と現場がつながり、社会との接点が整理されていくこと──
これが広報の本質的な成果です。
そのために必要なのは、「支援してくれる誰か」ではなく、
“視座を共にできる戦略パートナー”の存在です。
広報とは、情報発信ではなく、「組織がどう在るか」を社会と共に考える営み。
そしてその思考には、共に問いを深める伴走者が必要なのです。