広報を“社内だけ”で完結させるには、限界がある
広報を社内で完結させようとする企業は少なくありません。
特に中小・スタートアップ企業では、
「広報は社内の人間がやるべき」「コストをかけるのは発信物そのもの」といった前提のもと、
専任者1名、あるいは兼任体制で運営されることが一般的です。
しかし、現場ではこうした声が絶えません。
- 「経営や事業部と連携できない」
- 「社内の誰とも戦略を相談できない」
- 「何が成果なのか、そもそも評価軸が見当たらない」
つまり、広報担当者が“組織内で孤立”する構造が常態化しているのです。
これは単なるリソース不足ではなく、
もっと根深い構造的な問題があると私たちは考えます。
社内のどこにも“壁打ち相手”がいない
広報業務の多くは、日々の調整や実務に追われながらも、
本来は「何を伝えるべきか」「それは誰にどう届くべきか」という
高度な思考と判断を要する領域です。
ところがその思考プロセスを支えるべき対話相手が、社内にいない。
あるいは、経営や事業部にとって広報が“戦略パートナー”ではなく“発信担当”と見なされている。
この結果、広報担当者は「社内には相談できる人がいない」という構造的孤独に陥ります。
「リソースがあれば、内製できる」は本当か?
ここでよく聞かれるのが、
「人員が増えれば内製でやっていけるのでは?」という見解です。
もちろん、実務負荷を分担するリソースは重要です。
ですが、広報に必要なものはそれだけではありません。
必要なのは──
視座の補強と、構造の設計力。
広報とは単に発信物をつくる仕事ではなく、
企業の意思や姿勢を、社会の中でどう意味づけていくかを設計する営みです。
つまり、「組織の内側」と「社会の文脈」をつなぐ“翻訳装置”であり、
この翻訳には、高度な俯瞰力と社会文脈の理解、そして対話による思考の往復が不可欠なのです。
広報に必要なのは、“視座”と“関係性を設計する力”
ではなぜ、それが社内だけでは難しいのか?
答えは、広報という機能が、
「経営と社会の関係性を再設計する役割」を持つからです。
- 経営が見ているビジョン
- 現場が抱えている温度感
- 社会が企業に期待している構造
これらの間に立ち、文脈を接続すること。
それが広報本来の役割であり、その設計には複数の視座の交差点が必要です。
しかし、組織内だけでこの視座を保ち続けるのは極めて難しい。
そのために必要になるのが、外部パートナーの存在なのです。
外部パートナーの本質的役割とは?
外部パートナーの価値は、単なる“作業代行”ではありません。
リリース作成やメディア対応だけを求めるのなら、専門職を社内で雇用する方が合理的です。
しかし実際に私たちMalenが関わっている多くの企業では、
以下のような役割を求められています。
- 広報機能を組織的に立ち上げたい
- 経営陣と広報の橋渡しをしてほしい
- 社内広報担当の壁打ち相手になってほしい
- 広報が単なる発信担当で終わらない体制を設計したい
これらはすべて、「視座と対話と翻訳の機能」を外部に持つという発想に基づいています。
社内完結から、設計型パートナーシップへ
広報とは、単なる内製/外注という二項対立では語れません。
本質は、「企業のどこに広報機能を持たせ、どこに“社会との接点”を置くか」の設計です。
Malenはその設計を、
外部パートナーとして担うと同時に、
いずれ企業が“自走”できる体制へ移行することを前提に伴走しています。
広報体制とは、ある日突然完成するものではありません。
それは、企業の成長フェーズに応じて更新、再設計され続ける、“動的な資産”なのです。
次回予告
シリーズ第2回では、「広報体制を構築する5つのステップ──内製×外部の最適バランスとは」をテーマに、
社内外の役割分担をどう設計すればよいかを具体的に解説します。