【連載#1-2】PR会社と広告代理店、どう選ぶ?──“迷い”の正体から考えるエージェンシー選定の本質

違いは分かる。でも、決めきれない。

「PR会社と広告代理店の違いを教えてほしい」
このテーマはよく検索され、解説記事も多く存在します。

けれど、違いを「知ったから」といって、
自社にとって最適なパートナーを「選べる」わけではありません。

実際の現場では──
A社は実績が豊富。B社は提案が斬新。C社は費用が手頃。
比較資料は並んだけれど、どれも決め手に欠ける。

こうした状況で、最終的には「無難そうな会社」に落ち着くか、
「他社も使っているなら」という理由で判断してしまうことも珍しくありません。

この“迷い”には、構造的な背景があります。


なぜ担当者は決めきれないのか?──選定現場のリアル

私たちは、こうした選定の場に数多く立ち会ってきました。
その中で感じるのは、判断の曖昧さは、担当者の優劣ではなく、むしろ制度や状況に内在する構造問題だということです。


社内の評価軸が曖昧

「上司は“露出が多ければOK”と言うけれど、それってどの時点で判断するの?」
「そもそも広報にKPIがない」
──これは現場でよく聞く声です。

外部パートナーを導入するのに、目的も成果基準も不明瞭
これでは選定基準が定まらず、「なんとなく印象」で選んでしまいがちです。


判断ミスの責任を背負いたくない

予算を伴う意思決定であればあるほど、
担当者は“間違えたくない”プレッシャーに晒されます。

提案は華やかだけれど、本当に実行されるのか?
担当が途中で変わるんじゃないか?
「思ったよりも露出が出なかったら、自分の責任になるのでは?」

こうして、積極的な判断ができなくなるのです。


「自分たちは何を変えたいのか」が言語化されていない

これが最大の構造課題です。

本来、エージェンシー選びは「自社のどこに変化を起こしたいか?」から始めるべきもの。

  • 社会との関係性を深めたい?
  • ブランドの意味を育てたい?
  • 経営の文脈に広報を接続したい?

こうした問いを曖昧にしたまま「提案書」で判断しようとするから、
“良さそう”だけが先行し、選定後にズレが生じてしまうのです。


PR会社と広告代理店の違い──手段ではなく「視点」の差

ここで改めて、PR会社と広告代理店の違いを整理しましょう。

項目PR会社広告代理店
メイン手法メディアリレーションズ、取材誘致広告枠購入、キャンペーン企画
伝達経路記事・取材・特集(第三者評価)企業メッセージ(直接出稿)
信頼性高い(中立性・社会的意義)見せ方による(信頼は演出)
費用実務支援費/月額・スポット広告枠費+制作費

しかし、これはあくまで手段の違いに過ぎません。

本質は、
✔︎ PRは「意味を社会と共有する視点」
✔︎ 広告は「認知をコントロールする視点」

つまり、「誰の視点で伝えるか」が異なるのです。


よくある失敗:「違い」で選んで「違和感」でつまずく

以下は、実際によくある失敗ケースです。

  • PR会社に頼んだが、記事は出たものの自社の事業意図とズレた内容だった
  • 広告代理店に頼んだが、綺麗な制作物はできたけど、社内で“それっぽい”としか言われなかった
  • プレゼン時の担当者と実務担当が違い、温度感が急に落ちた

いずれも、「違い」は理解していたはず。
でも本質は、“自分たちが何を変えたかったか”を十分に共有しないままスタートしたことにあります。


真に問うべきは、「誰と、どこまで考えられるか」

だからこそ、最も重視すべきは
「どのくらい深い思考で伴走してくれるか」です。

  • 目的を言語化してくれるか?
  • 社内外の文脈を構造で捉えようとしてくれるか?
  • 広報を単なる作業ではなく、「意味設計の営み」として扱っているか?

これらを見極めることが、選定後の後悔を防ぐ最大の保険になります。


Malenが大切にしているのは、「変化を一緒に設計すること」

私たちMalenは、
露出数や資料の体裁よりも、
「企業が社会とどう関係を築き直したいのか」という本質に寄り添います。

PRとは、信頼を資産に変え、関係性を丁寧に紡いでいく営み。
そして、それを“企業の未来を設計する手段”に昇華させることこそ、私たちの役割だと考えています。


次回(#3)では、「失敗しないPRパートナーの選び方──5つの視点」をお届けします。