違いは分かる。でも、決めきれない。
「PR会社と広告代理店の違いを教えてほしい」
このテーマはよく検索され、解説記事も多く存在します。
けれど、違いを「知ったから」といって、
自社にとって最適なパートナーを「選べる」わけではありません。
実際の現場では──
A社は実績が豊富。B社は提案が斬新。C社は費用が手頃。
比較資料は並んだけれど、どれも決め手に欠ける。
こうした状況で、最終的には「無難そうな会社」に落ち着くか、
「他社も使っているなら」という理由で判断してしまうことも珍しくありません。
この“迷い”には、構造的な背景があります。
なぜ担当者は決めきれないのか?──選定現場のリアル
私たちは、こうした選定の場に数多く立ち会ってきました。
その中で感じるのは、判断の曖昧さは、担当者の優劣ではなく、むしろ制度や状況に内在する構造問題だということです。
社内の評価軸が曖昧
「上司は“露出が多ければOK”と言うけれど、それってどの時点で判断するの?」
「そもそも広報にKPIがない」
──これは現場でよく聞く声です。
外部パートナーを導入するのに、目的も成果基準も不明瞭。
これでは選定基準が定まらず、「なんとなく印象」で選んでしまいがちです。
判断ミスの責任を背負いたくない
予算を伴う意思決定であればあるほど、
担当者は“間違えたくない”プレッシャーに晒されます。
提案は華やかだけれど、本当に実行されるのか?
担当が途中で変わるんじゃないか?
「思ったよりも露出が出なかったら、自分の責任になるのでは?」
こうして、積極的な判断ができなくなるのです。
「自分たちは何を変えたいのか」が言語化されていない
これが最大の構造課題です。
本来、エージェンシー選びは「自社のどこに変化を起こしたいか?」から始めるべきもの。
- 社会との関係性を深めたい?
- ブランドの意味を育てたい?
- 経営の文脈に広報を接続したい?
こうした問いを曖昧にしたまま「提案書」で判断しようとするから、
“良さそう”だけが先行し、選定後にズレが生じてしまうのです。
PR会社と広告代理店の違い──手段ではなく「視点」の差
ここで改めて、PR会社と広告代理店の違いを整理しましょう。
項目 | PR会社 | 広告代理店 |
---|---|---|
メイン手法 | メディアリレーションズ、取材誘致 | 広告枠購入、キャンペーン企画 |
伝達経路 | 記事・取材・特集(第三者評価) | 企業メッセージ(直接出稿) |
信頼性 | 高い(中立性・社会的意義) | 見せ方による(信頼は演出) |
費用 | 実務支援費/月額・スポット | 広告枠費+制作費 |
しかし、これはあくまで手段の違いに過ぎません。
本質は、
✔︎ PRは「意味を社会と共有する視点」
✔︎ 広告は「認知をコントロールする視点」
つまり、「誰の視点で伝えるか」が異なるのです。
よくある失敗:「違い」で選んで「違和感」でつまずく
以下は、実際によくある失敗ケースです。
- PR会社に頼んだが、記事は出たものの自社の事業意図とズレた内容だった
- 広告代理店に頼んだが、綺麗な制作物はできたけど、社内で“それっぽい”としか言われなかった
- プレゼン時の担当者と実務担当が違い、温度感が急に落ちた
いずれも、「違い」は理解していたはず。
でも本質は、“自分たちが何を変えたかったか”を十分に共有しないままスタートしたことにあります。
真に問うべきは、「誰と、どこまで考えられるか」
だからこそ、最も重視すべきは
「どのくらい深い思考で伴走してくれるか」です。
- 目的を言語化してくれるか?
- 社内外の文脈を構造で捉えようとしてくれるか?
- 広報を単なる作業ではなく、「意味設計の営み」として扱っているか?
これらを見極めることが、選定後の後悔を防ぐ最大の保険になります。
Malenが大切にしているのは、「変化を一緒に設計すること」
私たちMalenは、
露出数や資料の体裁よりも、
「企業が社会とどう関係を築き直したいのか」という本質に寄り添います。
PRとは、信頼を資産に変え、関係性を丁寧に紡いでいく営み。
そして、それを“企業の未来を設計する手段”に昇華させることこそ、私たちの役割だと考えています。
次回(#3)では、「失敗しないPRパートナーの選び方──5つの視点」をお届けします。