【業界別 / IT】短期施策だけじゃ伸びない。IT企業に必要な“積み上がる広報”とは(1/3)

リード獲得のための広告、資料請求キャンペーン、ウェビナー――。
IT企業のマーケティングでは、短期で成果が見える施策が重視されてきました。
けれど最近、「数字は取れているのに、なぜか商談につながらない」「指名で選ばれない」と感じてはいませんか?

それは、“積み上がる広報”の設計がされていないからかもしれません。

機能や性能だけで差別化できた時代は終わり、
今、選ばれている企業は「この会社だから使いたい」と思わせる何か――
つまり、“企業としての姿勢”や“世界観”を丁寧に発信し、信頼を築いています。

このシリーズでは、忙しい現場でも無理なく取り組める中長期型の広報設計について、
なぜ今それが必要なのか、どこから始めればよいのかを全3回にわたってお伝えしていきます。


この記事でわかること

  • なぜ今、中長期のブランディングが求められているのか
  • IT企業が広報・PRを後回しにしがちな理由とそのリスク
  • 広報活動が「企業価値を育てる資産」となるプロセス
  • 成果が出る広報と、出ない広報の決定的な違い
  • 次回以降のテーマとつながる“中長期ブランディング”の視点

IT企業の多くは、合理的でスピード感のある施策に慣れています。
広告を出せばクリックが集まり、MAツールでスコアリングし、商談につなげる。定量的な成果が出る流れは安心感もあるでしょう。

しかし、いつのまにか「売れる仕組み」ではなく「売り切る仕組み」に偏ってしまっていないでしょうか?

  • 競合と似たような広告コピー
  • 内容で差別化しにくいホワイトペーパー
  • 中身よりも“数”を追うKPI設計

このような状況が続くと、商談は増えても“自社でなければいけない理由”が薄まり、継続率・信頼・ブランド力で差がついてきます。

数を追いながらも、意味を問う視点を失っていないか?
短期の成果ばかりを積み上げ、中長期の「信用」を積み上げ損ねていないか?

広報・PRとは、まさにその「信用」を設計的に育てる手段なのです。


「広報の重要性は理解しているが、どうしても後回しになる」
この状態には、明確な理由があります。

▼よくある現場の声

  • 広報は“やれたらやりたい”で止まっている
  • 専任がいない or 兼任で手が回らない
  • 出すリリースが「イベント的」で、点で終わっている
  • SNSやブログが一度止まると再開できない

でも実は、この背景にあるのは「設計」と「優先順位」の欠如です。

広報は“思いついたらやるもの”ではなく、
「戦略的に設計し、継続するもの」であるべきです。

IT企業ほど「構造」や「フレーム」を理解すれば強くなるという側面もあります。
仕組み化さえできれば、少人数でも強い広報は実現できます。


広報がうまく機能している企業では、以下のような変化が起きています:

  • 採用時に「御社のビジョンに共感しました」と言われる
  • 経営陣の思想や発言が“会社らしさ”として流通する
  • メディアからの取材依頼が「会社そのもの」に届く
  • 商談で「他と迷ったけど、御社に信頼感があった」と言われる

これらは、単なる機能紹介では起きません。
企業の姿勢、物語、思想が“外に伝わる状態”があって初めて生まれる反応です。


広報にはセンスが必要――と思われがちですが、成果を出す企業には共通する設計があります。

成果が出る広報出にくい広報
軸が明確(何を伝えるか)都度テーマがバラバラ
継続して発信している数ヶ月止まっている
社内外に一貫した世界観がある社内と外で語っていることがズレている
経営・人・文化も発信対象にしている機能紹介ばかりに偏っている

広報は「誰が、どんな言葉で、どこに、何を伝え続けるか」の設計がすべてです。
これは、属人的なセンスではなく設計思考で身につけられます。


第一歩は、「今、自社はどう見られていて、どう見られたいか」を棚卸しすることです。
具体的には以下のような問いから始めましょう:

  • なぜこの会社を立ち上げたのか?
  • どんな課題に取り組んでいるのか?
  • チームや文化にどんな特徴があるのか?
  • 顧客にどう選ばれてきたか?
  • 社外にどう語られているか?

これらを言語化しておくことで、プロダクト単体ではなく、“会社そのものがブランド”として見られるようになります。


  • IT企業こそ、“積み上がる広報”の視点が必要
  • 広報は「設計して積み上げる」ことで、企業の信用やブランドになる
  • 機能や技術で差別化できない時代こそ、“誰が、なぜやっているか”を伝える力が問われる

第2回では、「プロダクトだけでは足りない。IT企業が語るべき“3つの軸”とは?」をテーマに、
企業が中長期で伝えるべき情報の整理法について解説します。


「自社なら、まず何から始めればいい?」
「兼任でやっているけれど、このままでいいのか不安…」

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まずは、自社に合った“積み上げ型広報”の設計図を一緒に描いてみませんか?